現状と論点の整理
なぜ現行の会費表のままでは新事業に対応できないのか
令和8年度の会費体系は、長年の運用に耐える精緻な設計です。しかしその精緻さは、 薬局=施設と薬剤師=資格を軸にした「組織会員」の論理でできています。
| 区分 | 県薬会費 | 合計(日薬等含) | 性格 |
|---|---|---|---|
| 正会員 A | 36,000 | 75,000 | 薬局開設・管理薬剤師。応能会費の負担主体 |
| 正会員 BⅠ | 20,000 | 32,000 | 勤務薬剤師 |
| 正会員 BⅡ | 14,000 | 26,000 | 病院・診療所・行政 |
| 正会員 BⅢ | 8,000 | 20,000 | 家族薬剤師・非就業 |
| 賛助 Ⅲ/Ⅳ | 8,000/12,000 | 同左 | 薬剤師以外・団体 |
| 寿/特別 | 0/1,000 | 5,000/1,000 | 高齢会員・学生等 |
これに加えて、薬局開設者は施設ごとに応能会費(前年処方箋枚数 × 4.0円、上限48,000枚、6月から翌3月まで年10回の口座引去り)と、 入会金 5,000円・新規施設会費 150,000円を負担します。徴収は銀行振込と口座引去りが原則です。
4つの構造的ミスマッチ
| 今後やりたいこと | 現行構造の壁 |
|---|---|
| 会員ランクで金額を変える | 会費区分は定款・総会マター。ランクごとに料金を刻むと総会議案が複雑化し、毎年の改定が硬直化する |
| 県外から会員を取り込む | 正会員資格は本人が所属する県薬に帰属。県外薬剤師をそのまま正会員にはできない |
| コンテンツ・物販を売る | 会費は「対価なき賦課金」。売買(代理販売)は預り金・特商法・インボイスが絡み、会費と会計を分けねばならない |
| カード/アプリ決済に一本化 | 応能会費のような大口・定期は口座振替が最安。全部カードにすると手数料で目減りする |
2つのアプリの役割分担
「公的インフラ」と「会員価値」を混ぜない
2つのアプリを機能で分けるのではなく、誰のための、どういう性格の情報かで分けます。 薬局どん2は課金せず、KPA+は法的義務情報を塞がない ── この境界を最初に固定します。
薬局どん2
非会員薬局も含む、県全体の薬局情報プラットフォーム
- 休日当番・薬局機能情報の登録と公開(県民向けマップ)
- 非会員薬局の情報も収録する公的データベース
- 行政通知・着信文書など法的義務情報の配信
- 薬局からの「入力専用ツール」としての位置づけ
KPA+
会員専用 iPhone / Android アプリ(新規リリース)
- デジタル会員証・研修参加履歴・活動ポートフォリオ
- 研修会の個人アカウント申込/認定単位の自動管理
- 県薬が代理販売する物販・コンテンツのストア
- 会員ランクと有料プラン、アプリ内決済
3つの収益レイヤー
改定の重さ・会計・決済手段がそれぞれ異なる
収益を性格の違う3層に分けます。下の層ほど改定が重く安定的、上の層ほど機動的。 この分離こそが「会費区分では対応しきれない」という問題への根本的な答えです。
統括会費 ── 専門職団体としての会費
改定主体:総会・定款 / 徴収:口座振替・銀行振込
現行の A/B/賛助/寿/特別をほぼ維持。応能会費・入会金・新規施設会費もここ。日薬・薬連への上納分を含む。ここは触らないことで安定と信頼を担保する。
KPA+ サービスプラン ── 個人が選ぶデジタル価値
改定主体:理事会 / 徴収:サブスク(Stripe・カード/コンビニ)
任意加入の月額・年額プラン。研修動画・e-learning・認定単位管理・ポートフォリオなど。総会を通さず理事会裁量で機動的に価格・内容を改定できる。会員ランクと県外デジタル会員はここに載る。
物販・コンテンツ ── 代理販売
改定主体:事業判断 / 徴収:都度決済(Stripe・カード/Apple Pay/コンビニ)
県薬が代理販売する書籍・器材・研修教材・有料資料。会員は割引という形で会費以外の価値を可視化。非会員・県外にも開放し、間口を広げる。会費とは会計を分離(預り金・特商法・インボイス対応)。
決済システムの導入設計
全部カードにしない。手段をレイヤーごとに最適化する
現在の銀行振込・口座引去りを一気に置き換えるのではなく、「大口・定期は口座振替のまま、小口・任意・都度はStripe」という併存が正解です。
| 徴収対象 | 推奨手段 | 理由 |
|---|---|---|
| 応能会費・統括会費(定期) | 口座振替を維持 + Web口振受付を追加 | 大口・定期は振替が最安。紙の口座振替依頼書をWeb完結にするだけで大幅に省力化 |
| 入会金・新規施設会費(一時金) | Stripe(カード/コンビニ) | 5,000円・150,000円の一時金。振込消込の手間をなくし、申込と同時決済に |
| サービスプラン(サブスク) | Stripe Billing | 月額・年額の自動継続。解約・返金・請求書発行を自動化 |
| 物販・コンテンツ(都度) | Stripe+Apple Pay/Google Pay | アプリ内でワンタップ購入。会員割引はクーポン/会員価格で表現 |
アプリ内課金(IAP)の落とし穴
iOS/Androidアプリ内でデジタルコンテンツを販売すると、Apple/Googleのアプリ内課金(手数料15〜30%)が強制される場合があります。 一方、物理的な物販や「会員登録の外部決済」は対象外です。設計指針:
代理販売の会計・法務
県薬が販売主体となる以上、特定商取引法の表示、インボイス(適格請求書)発行、 預り金・立替金の区分経理が必須です。物販売上は会費会計と明確に分離し、公益目的事業と収益事業の区分に注意します。 Stripeなら特商法表示・領収書・インボイス番号記載まで標準機能でカバーできます。
会員ランクと会費区分の拡張
「支払いのランク」と「貢献のランク」を分けて設計する
ご要望の「会員ランクを設定し金額を決める」は、2種類のランクに分解すると綺麗に整理できます。 一つは支払いに応じたサービスプラン、もう一つは活動実績に応じた貢献ランク。前者が収益、後者が会員拡大の原動力になります。
A. KPA+ サービスプラン(有料・レイヤー2)
- デジタル会員証
- 研修会の個人申込
- 通知・どん2連携
- 基本情報アクセス
- オンデマンド研修・e-learning
- 認定単位の自動管理
- 活動ポートフォリオ
- 物販5〜10%割引
- Standard の全機能
- 専門研修動画ライブラリ
- 認定薬剤師取得支援
- 研修・イベント優先申込
※ 正会員は大きな会費(県薬会費 8,000〜36,000円+日薬等)を負担しているため、Premium を追加課金せず"付帯"とする。 上位会費の会員に上乗せ課金すれば反発を招くうえ、Premium 付帯なら「会費に見合う価値」を可視化できる。 有料サブスク(Standard/Premium)は正会員資格を持てない層(賛助・特別会員・県外)限定とし、県内薬剤師には開かない(会員離れ防止 ── 下記ガード)。
| 会員区分 | 県薬会費/年 | KPA+プラン |
|---|---|---|
| 正会員 A | 36,000 | Premium 付帯(追加課金なし) |
| 正会員 BⅠ/BⅡ/BⅢ | 8,000〜20,000 | Premium 付帯(追加課金なし) |
| 賛助会員 | 0〜12,000 | Free(任意で Standard/Premium 購入) |
| 特別会員(学生) | 1,000 | Free+(学生プラン) |
| 寿会員 | 0 | Free(Premium 優遇も検討可) |
| 県外デジタル会員(新設・正会員資格なし) | ─ | 県外会員費(コンテンツ限定)。正会員を下回らない水準で設定 |
① 会の審査で区分を決める(自己申告・自己選択にしない):安いデジタル区分は"誰でも買える商品"にせず、会の入会審査が「正会員に該当しない外部者」と認定した人にのみ付与する会員クラスにする。「所属県薬」と「勤務地」は一致しない(鹿児島県薬に所属しつつ他県勤務、他県薬会員で鹿児島勤務など)ため、位置情報や自己申告での機械的判定は成り立たない。だから免許番号での本人特定+薬局名簿・厚生局データ(施設・管理薬剤師)+所属/勤務の申告+他県薬会員証明を、会が総合判断する ── 自己申告の"県外"だけで安い区分は取得できない。
② 価値ガード:サブスクはコンテンツ閲覧のみ。議決権・地位・付帯Premium・学校薬剤師/委員会アサイン・認定の正規性・活動記録の公的性は会員限定。県内で実務するには県内会員機能(当番・学校薬剤師・地域研修・認定の地域枠)が必須で、content-only のサブスクでは実務が成立しない=仮に区分を偽っても割に合わない。会費とサブスクは"別カテゴリ"で金額の単純比較対象にしない。
③ 価格ガード:県外会員費も"タダ同然"にせず、正会員が実質負担するデジタル相当を下回らない水準に。会員でいる方が常に総合的に得、という関係を保つ。
B. 貢献ランク(無料・報奨性の源泉)
研修参加・地域活動・委員会参画・紹介実績などの活動ポイントで上がる、支払いとは別軸のランク。物販割引や優先枠という「得」で、会員でい続ける理由と、仲間を誘う動機をつくります。
C. 会費区分の「拡張」=新設する3区分
統括会費の表そのものは維持しつつ、足りない受け皿を新区分として足します。ここが「会費区分の拡張」への具体回答です。
| 区分 | 対象 | 目安額/年 | 議決権 | レイヤー |
|---|---|---|---|---|
| A/B/賛助/寿/特別 | 現行どおり(県内・資格ベース) | 現行維持 | あり | 維持 L1 |
| デジタル会員(県外・購読) | 正会員資格を持てない層限定(県外薬剤師・非薬剤師・学生)。県内薬剤師は対象外 | 12,000〜18,000 | なし | 新設 L2 |
| 学生プラス | 特別会員(学生)のデジタル拡張。卒後の継続導線 | 1,000+Free | なし | 新設 L2 |
| 法人デジタルプラン | 薬局(応能会費の負担主体)。従業員の研修seatを一括提供 | 従量/席数 | — | 新設 L2/3 |
D. デジタル会員の設計 ── 3案から選択
安い区分は「会員離れ・地域偽装・所属と勤務地の不一致」を生む。その"器"の作り方を3案で示す。委員会で方針を選ぶ。
| 観点 | X. 会の審査で付与 | Y. 区分を作らない | Z. 価格を上げて広く募集 |
|---|---|---|---|
| 誰が入れる | 会が審査した外部者のみ | デジタル"会員"なし | 誰でも(県内外・資格問わず) |
| 価格 | 安い(¥12,000〜18,000) | ─(コンテンツは都度課金/付帯) | 会費水準に上げる(¥20,000前後〜) |
| 会員離れ | 審査で防ぐ | 起きない | 起きない(安くない) |
| 偽装・所属/勤務地 | 審査で吸収(運用負荷) | 無関係 | 消える(価格で解決) |
| 運用 | 入会審査が必要 | 最軽量 | 本人確認のみ・軽い |
| 2,500への寄与 | 安く入りやすい=県外で稼げる | 分母は別戦略が必要 | 広く募集・価値次第 |
| 1人あたり収益 | 低 | 都度課金 | 高 |
安い区分を会が審査して付与。会員数に算入でき県外を取り込めるが、審査運用と偽装対応が要る(前掲①〜③のガードで守る)。
安い"会員"を作らず、コンテンツは会員の付帯特典か都度課金で売る。判定問題が原理的に消える最軽量案。2,500は別の伸ばし方で。
価格を会費水準に上げれば安くないので抜け道にならない。審査も偽装対策も不要で誰にでも広く開ける。安さでなく価値で集める。
1,800 → 2,500 の到達戦略
+700名を、3つの経路と1つの守りで積み上げる
単なる勧誘では+39%は届きません。入口(新区分)・動機(報奨性)・守り(離脱防止)を組み合わせます。 以下はあくまで到達イメージの内訳です。
報奨性(紹介)の仕組み
既存会員が新会員を紹介すると、双方に研修クーポンor物販クレジットを付与。紹介実績は貢献ランクにも加算。 「情報を得る権利」だけでは人は誘えませんが、ポートフォリオ・活動記録という転送不可能な価値を軸にすると、 「これは職場が変わっても自分に残る」という個人の動機で会員が会員を増やす循環が生まれます。
ロードマップ
議案化が先、開発は段階投入
方針確定と議案化
〜次回総会・理事会
本方針の合意 → 新区分(デジタル会員・学生プラス)を規程改正案として起草。どん2の公的情報基盤は現行運用を安定継続。KPA+のUI設計を確定。
KPA+ Free ローンチ+一時金決済
議案承認後
デジタル会員証・研修個人申込・通知を無料で全会員に開放。入会金・新規施設会費・物販をStripe決済化(外部決済でIAP回避)。まず「アプリに全員を乗せる」。
有料プラン・貢献ランク・県外会員
Free定着後
Standard/Premiumサブスク開始。貢献ランクと紹介報酬を稼働。県外デジタル会員の受付開始。物販ストアに会員価格を実装。
会費・応能会費のWeb化と統合
運用安定後
口座振替をWeb受付化、会費・応能会費のダッシュボード化。3レイヤー横断の会員管理・会計を統合。データに基づく価格最適化へ。
理事会に諮る決定事項
この方針を進めるために合意が必要な5点